IGS Audioの573EQのデモ動画を追加しました。
573EQという名称は非常に説明が上手くついており、500シリーズに対応した1073にインスパアされたEQという意味合いになります。IGSは元々クローンという考え方とは別に、Tubecoreなどの名機も製造していますので、そもそもの音作りの方向性というものについては、非常に上手なところがあります。IGS Audio自らの哲学が背景にありますから、単に昔ながらのクローンを現代の基盤に起こすという考え方に留まっていません。それ故に、クローンの機材も様々なメーカーに及んでおり、先日ご紹介したものではSontecまでをも題材にした機材も作っています。そうした中で、近年はNEVEへの興味も示すことで、1073をモチーフとしたEQやマイクプリアンプを作ってきました。
感触としては、動画を見て頂く通り外観からしてNEVEなのですが、それ以上に面白い点として独特のIGSならではのHi-Fiという特色も持ち合わせています。そう、IGS Audioは外観とクローンを多く作成している点、そしてオールドスクールな外観とはかけ離れた、Hi-Fiという特質も上手くブレンドすることで今風のサウンドに対応してきています。私が好きな機材の一つとして、Heritage AudioのMCM 20.4というミキサーがありますが、そちらのヘッドルームは1073をベースとして作られています。余り現代風という香りのしないサウンドで、むしろオールドファッションのサウンドそのものです。NEVE8816+8804というセットを一時期使用しておりましたが、それよりもファットで武骨というイメージを持つMCM20.4ですので、オールドNEVEのサウンドを現代に伝える機種の一つかと思います。ですので、elysiaやBettermakerといった最新鋭の考え方を持つ機材との相性は抜群です。各トラックのインサートポイントに、先ほどのelysiaを挿すとこれ以上ないくらいのファットでHi-Fiなサウンドを産み出すことができ、このチェインでしか作り得ない景色を見ることができます。これは当然の毛なのですが、それではIGS Audioではどうなのか?このHeritage Audioのミキサーに573EQをインサートしてみると、よくよくIGSの特色というものが理解できます。通常ファットな機材に、更にファットを追加してインサートすることはありません。それはHi-FiにHi-Fiを追加することがあまりないのと同じです。基本的には相反するもの同士でないと、表現が過剰になり結果的にはバランスを失うことで楽曲の完成度が下がる傾向にあります。この理屈から言えば、HeritageにIGSなどあり得ないように思える選択肢なのですが、HeritageにIGSは良く似合います。elysia、Bettermaker、SPLのような”超”が付くほどのHi-Fiではありませんが、ファットでマッフルなHeritageサウンドに上手く絡み合い、濃厚で濃密なサウンドを演出してくれるのがIGSです。特にこの573EQとのマッチングは絶妙で、ベースやギターによく用いることがあります。Hi-Passフィルターも付いていることから、低音の整理にも困ることはなく、上手く注高音を輝かせることができます。
また、もう一つの大きな特色としては、低音のブーストが強烈に効く点です。これは非常に大きな利点で、ハードギアでも低音が上がってくる機材というのは意外と少数派です。当社のスタジオで所有している多くのEQの中で、IGS Audioの他に低音を自在にブーストできるのは、Custom Audio GermanyのHDE250 だけでその他の著名な機材メーカーのものも、低音はほとんど上がってきません。Plutecタイプだから上手く低音を扱えると考えてしまいそうですが、意外とそうでないケースもあります。特にこの573EQはPultecでもないことから、非常に稀な特性を持つ機材と言えるかと思います。
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