来春公開予定のドイツ映画、”Vincero'”の公式主題歌が発表となりました。お聴きの通り、壮大な主題を持つこの楽曲は非常に展開が大きく、この雰囲気を出すのに相当な苦労がありました。オーケストラのサウンドとともに、多くのシンセサイザーにおけるプログラミングも使用していますが、特に様々な効果音とパーカッションの扱いには苦労しました。当初はフルオーケストラというよりは、むしろプログラミングを中心とした音作りで推移させようとしましたし、デモ音源を渡された時にも中世のヨーロッパを思わせるというよりは、近代的な雰囲気を求めているようにも思えました。しかし、映画の舞台は中世ど真ん中の十字軍遠征の時代。1,000年前後遡るとなると、その時代に対する憧れやロマンというものを表現していく必要性もあり、そうなるとやはりクラシックらしいサウンドも必要となり、結局はオーケストラを用い、サンクトペテルブルグでレコーディングを行い、そこから更にプログラミングを詰めていき、最終的にはパーカッションはリチャード・クレイダーマンのパーカッショニストとして活躍する、パリのパトリックに叩いて貰いようやく全体像が見えたという、非常に忍耐強い制作の進行を求められました。
何と言ってもこういう楽曲は、イメージとそぐわないと完全に使えないレベルの楽曲へとなり下がってしまうので、楽曲を扱う側のセンスというもののみに依存する割合が非常に大きく、総合プロデュースと編曲を担当している身としては、途中逃げ出したくなるほどの重圧がかかっていました。
因みに、この楽曲内でかなり重要な役割を果たしているのがSnareです。このテイクに行きつくまで、パトリックには何度となくリテイクをお願いして、納得のいくサウンドまでたどり着けました。更にはミキシング・マスタリングも自分で行いましたので、それはもう大変な作業でした。100トラックを超える壮大な楽曲を扱うには、当然DAW内で仕上げることなど不可能で、仮ミックスの段階でも作曲を担当したTonyから
『まさかこのままじゃないよね?』
というメールが届き、『もちろんだよ』という回答をしながらも、誰からも期待値が高いことを肌身で感じていました。少しネタ明かしをすると、このSnareにはIGS AudioのBlue Stripeが使用されています。ここまでの大編成の中でひと際輝きを出そうとすると、音量だけではない強力な個性を放つエネルギーが必要となります。当社で代理店を行っている機材ですが、この機材は最終兵器とも言えるような効果を発揮し、かなりの機材を見てきていますが、ここまでの強力なツールとなったものは今のところ他には見当たりません。
IGS Audio Blue Stripe。1176系ですが、物凄いエネルギーを得られます。
併せて動画も載せてみたいと思います。オーケストラと大音量のテノール歌手、そして50トラック近い重厚なシンセサイザーのサウンドをものともしないSnareの演出には、これ以外ありえないと言える効果を発揮しました。
最後は少し機材の話になってしまいましたが、これほどの大作に参加できたことは、今後の活動においても大きな誇りとして自分を支えてくれることかと思います。ドイツは、2018年のワールドカップ公式曲から、多数のご縁を頂いています。音楽の最先端を行き音楽先進国で、こうした実績を残していけることは非常に喜びです。
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