最も難しいマスタリングのジャンル一つとして、クラシックピアノがあります。現在担当させていただいているアーティストの作品で、昨今では珍しく年単位で制作を進めているものがありますが、何度かレコーディング音源を最終的な形で確認するべく、ミキシング・マスタリングまでを行いプレゼンテーションを行うという場がありました。
こういう場は『これありき』という音源で説得力を高めていくため、その音源そのものが全てを司るということになります。求められる要素は非常に多く、響き、輪郭、音色、バランス、ありとあらゆる要素の構築をあらゆる角度から考える必要があり、そのための実現には強力なイコライザーが必要となります。私の場合は、クラシックの楽曲を任せられた場合、登場するEQとして写真のBettermaker Mastering EQとSPL PQをメインに用いることが多いです。これだけで全てを網羅できるわけではありませんが、間違いなく現在世界で考えられる最も進んだEQであるとともに、時代とともに求められる”リアル”という概念においては、圧倒的にアドバンテージを持っているかと思います。
音色づくりのMastering EQと、世界観を作り上げられるPQ、双方ともに日本ではほぼ無名の機材ですが、一度世界へ出れば現在は憧れの的として用いられる機材です。求める音、考え方が新しければ、求める機材も当然最先端を行くわけで、その相互作用が更に新たな世界観を生み出すという構図でマスタリングは推移しています。
ダイナミックレンジが確保されながらも、深く迫力ある音源にするための努力は、こうした背景から作られています。
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